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残業代について

賃金とは?

労働基準法上の賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対価として使用者が労働者に支払う全てのものをいいます(労働基準法11条)。つまり、(1)使用者が労働者に支払うものであること、(2)労働の対価であること、という2つの要件を満たせば、基本給の他にも、家族手当等の諸手当や賞与も賃金にあたります。また、退職金も、労働協約、就業規則等でそれを支給すること、支給基準が定められていて、使用者に支払義務があるものは賃金と認められます。
労働基準法上の賃金にあたる場合には、同法24条において次のとおり賃金支払いに関する原則が定められています。

  1. 通貨払いの原則

    :賃金は、通貨で支払わなければいけない。
    …商品や自社株での支払いは禁止されています。

  2. 直接払いの原則

    :賃金は、直接労働者に支払わなければならない。
    …代理人や親等への支払いは禁止されています。

  3. 全額払いの原則

    :賃金は、労働者に対しその全額を支払わなければならない。
    …労働者に対する損害賠償として相殺することは許されません。

  4. 毎月1回以上、定期日払いの原則

    :賃金は、毎月1回以上、一定の期日に支払わなければならない。
    …賃金を意識的に遅配とし、退職強要の手段とすることは違法です。

また、賃金の未払いは労働基準法違反となるため、同法120条1号による罰則が適用されます。

残業代問題について

このように法律によって強力に保護されている賃金請求金ですが、特に残業代については、近年「サービス残業」という言葉が横行しているように、法律上支払われるべきものが支払われていないケースが多く見受けられます。それでは、法律上支払われるべき残業代はどのように算出されるのでしょうか。

残業とは?

まず、労働者が働く時間は、原則として1日に8時間、1週間で40時間以内と定められています(労働基準法32条)。これを超えて労働させるためには、職場の過半数労働組合代表か過半数従業員代表との労使協定を締結し(いわゆる36協定)、労働基準監督署に届け出ることが必要です(動労基準法36条)。残業とは、このように1日8時間、1週間40時間(法定労働時間)を超えた時間帯での労働をいいます(時間外労働)。

割増賃金

労働者が残業をした場合には、基本額の25%の割増賃金を請求できます(労働基準法37条)。これに加え、午後10時以降翌日午前5時までの労働(深夜労働)については基本額の25%の割増賃金を請求できますので(労働基準法37条)、残業が午後10時以降に及んだ場合には、割増率が50%となります。
また、残業とは別に法定休日(※)に労働した場合(休日労働)には、基本額の35%の割増賃金を請求でき(労働基準法37条、政令)、これが深夜労働となる場合にはさらに25%の割増となり、割増率の合計は60%になります。
まとめると、次の表のとおりとなります。

時間外労働深夜労働
深夜労働 50%割増
休日労働 35%割増60%割増

※法定休日とは
労働基準法35条により、使用者は労働者に対して、毎週1日または4週間に4日以上の休日を与えなければならないと定められています。これにより労働者に対して与えられる休日が「法定休日」となり、法定休日に出勤して労働をした場合に割増賃金を請求することができます。

時間給が1,000円のX氏の場合を例に、具体的に残業代を計算してみましょう。

所定労働時間が午前9時から午後6時まで(午後0時から午後1時まで休憩)の会社で
午前9時から午後11時まで労働した場合

午後6時から午後10時までの4時間は「時間外労働」なので25%割増
午後10時から午後11時までの1時間は「時間外労働」かつ「深夜労働」なので50%割増

したがって、この日の残業代は、
1,000円×1.25×4+1、000円×1.5×1=6,500円
仮に同じ条件で1か月に20日間労働したとすれば、
6,500円×20=130,000円
となり、X氏は1か月あたり130,000円の残業代を請求できます。

会社の反論

残業代の請求に対し、会社から、労働基準法37条に定める計算方法による残業代を支払う代わりに、定額の手当を支給する等の時間外労働等に対応する手当を支払っていたので、残業代を支払う義務はない等という反論をされることがあります。 この点、労働基準法が規制しているのは、同法37条に定める計算方法による一定額以上の時間外手当を支払うことですので、その規制に違反しない限りは、同条に定める時間外手当の計算をする必要はありません。したがって、上記のような会社の反論が認められることもあり得ます。
もっとも、定額の手当が時間外労働等に対応する手当に該当するかどうかが不明確な事例も多くみられ、これに該当しないと判断された場合には会社の反論は認められず、残業代の請求ができることになります。また、残業代を基本給に組み込んで支給していたとの反論については、判例上、基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意がされていること、労働基準法所定の計算方法による額がその額を上回るときは、差額を当該賃金の支払時期に支払うことが合意されていること、という2つの要件を充たす場合に限り、会社は定額の手当の支払いによって割増賃金の支払いを免れることになります。実際には、このような厳しい要件を充たす場合は少ないため、多くの事例において会社に対し残業代の支払いを命じる判断が下されています。